資料保存Q&A

酸性紙問題

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酸性紙と中性紙について教えてください。
日本には酸性紙と中性紙の厳密な規格はありません。国立国会図書館の『受け入れ新刊図書のpH調査』によれば、pH6.5未満の紙を「酸性紙」、6.5以上10くらいまでの紙を中性紙と呼んでいます。
欧米では、長期保存にふさわしい中性紙の規格をANSI(米国規格協会)やASTM(米国試験材料協会)などが制定しています。pH値だけでなく、原料パルプにリグニンなどの不純物を含まないこと、炭酸カルシウムなどのアルカリ性物質を2%相当含むことなどが挙げられています。
酸性紙の主な原因は、硫酸アルミニウムの使用によるものです。この薬品は、紙のにじみ止め剤(ロジンサイズ)の定着に使われ、日本に洋紙の製造技術が導入された1860年代から今日まで使われています。

酸性紙はなぜ長期保存に向かないのですか?
酸性紙は、長い年月でボロボロに劣化します。
酸性紙に含まれる硫酸アルミニウムは、紙の中の水分や空気中の水分と反応して硫酸になります。硫酸は紙の酸性劣化を引き起こします。
冬季の暖房で、空調が昼間だけ稼動している場合、夜間にスイッチを切ったあとは急激に湿度が下がります。これが繰り返されると、乾湿の激しい変化によって、紙に含まれる水分が徐々に失われ、しなやかさがなくなります。紙の中に生成される硫酸には強い脱水作用があり、水分の放出がさらに加速され、最終的にはボロボロになってしまいます。欧米ではこれを「Slow Fire(緩慢な火災)」と呼んでいます。

和紙には酸性のものはないのでしょうか?
和紙にも酸性のものがあります。私どもの『手漉き和紙の全国調査』*では、41点のうち23点がpH6.5未満の酸性を示していました。和紙は修復用としても国内外で高い評価を受けていますが、強度や使い勝手だけでなく、pHや安全性の検討も必要です。

紙の強制劣化試験は、どのように行うのですか?
紙の強制劣化試験は、この半世紀以上さまざまな方法が提案されています。多くは、高い温度・湿度に紙をさらし、紙の外観や強度変化を調べるというものです。
近年では、ASTM(米国材料試験協会)が「密閉試験管法」を開発し、自然劣化にもっとも近い方法として研究者の間で注目されています。試験紙は、実際に自然劣化した紙資料を分析し、同じ作り方で再現したものを使用します。これを試験管の中に入れ、100℃で5日間強制的に劣化させます。自然劣化した紙と強度残有率(耐折強さや引き裂き強さ)、有機酸(蟻酸や酢酸など)を比較し、耐久性を判定します。
ASTMは、光や汚染ガスによる試験方法も開発しています。

「挿入法」という紙の強制劣化試験は、どのように行うのですか?
pHの異なる紙同士を接触させ、高い温度・湿度の中で強制劣化させる試験です。多くの紙資料は単体ではなく、書籍のように複数の異なった紙が組み合わされているからです。試験では、酸性紙と中性紙が混在した場合のお互いの影響を調べることができます。
東京藝術大学・東京農工大学と特種製紙が共同で研究しています。

「紙の強制劣化試験では寿命がどこまでわかるのですか?
紙の寿命を正確に測る方法はみつかっていません。
テーブルテストでは、高温・高湿度での強制劣化が常温で何年という推定もできますが、現実の保管条件はさまざまなので、寿命を正確に測るのは困難です。



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