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酸性紙問題とは?

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紙に含まれる酸が、時間の経過とともに紙を劣化させる現象のことです。

19世紀半ばに近代製紙技術が確立し大量の洋紙が生産されるようになりましたが、半世紀もたたないうちにそれらの紙資料が急速に劣化しはじめました。
ここでは、酸性紙問題の原因とその歴史をご紹介します。
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酸性劣化の主な原因

紙が酸性化する主な原因は硫酸アルミニウムです。

洋紙の製造には、「サイジング」というインキのにじみを防ぐための工程があります。にじみ止めには、「ロジン(松ヤニ)」という物質が使われ、それを定着させるためには「硫酸アルミニウム(硫酸バンド)」が使われてきました。硫酸アルミニウムは、紙に含まれる水分と反応して硫酸を生成し、紙を内部から崩壊させます。これを酸加水分解といい、酸が触媒となってセルロースの重合度を低下させるのです。硫酸には強い脱水作用があり、水分の放出によって繊維の角質化を引き起こし、紙は堅く脆くなっていきます。

一方、外的な劣化要因には保管環境があります。特に、相対湿度の急激な変化は紙資料を劣化させます。保管環境の温度上昇と下降にともなう相対湿度の変化が繰り返されると、紙に含まれる水分が徐々に失われていきます。長い年月でしなやかさがなくなり、最終的にはボロボロに劣化してしまうことがわかっています。

その他、紙の酸性化の原因として、
・大気汚染ガスによる資料への影響
・強い酸性物質と接すると酸が移行すること(マイグレーション)
が挙げられます。
▲酸性紙による劣化 1925年パリ
特種製紙株式会社所蔵

欧米における酸性紙問題と対応

欧米では、早くから酸性紙の問題が提起され、資料保存のための中性紙の国家規格が制定されています。

近代の紙の極端な劣化現象は、19世紀中ごろから危惧されはじめました。1925年、スウェーデンの研究者S.ケラーとG.ホールデンは、紙に含まれる酸が劣化の主原因であることを発表しました。

1957年、アメリカの修復家ウィリアム・J・バローは、1900年〜49年の間に出版された本の酸性度・劣化の状態について綿密な調査を行い、この問題の深刻な状況を広く知らせました。バローは保存性の良い紙の必要性を訴え、指針を策定しました。中性サイズ剤を用い、良質の化学パルプを原料とし、填料として炭酸カルシウムを加えるということです。バローの指針に基づき、書籍用紙「パーマライフ」が製造されました。

アメリカではその後、資料保存の問題意識が高まり、1984年に、国家規格として「印刷された図書館資料のためのパーマネンス規格」(ANSI Z39.48-1984)が制定されました。
 

日本における酸性紙問題の展開と現状

わが国では、欧米より数十年遅れで酸性紙問題が提起され、上質紙の大半は中性紙化されました。

1982年、金谷博雄氏が『本を残す』―用紙の酸性問題資料集―を刊行し、酸性紙による資料劣化への警鐘を鳴らしました。

1983年、国立国会図書館に「資料保存対策班」が設けられ、その中の酸性紙対策班というグループが蔵書の劣化調査を行いました。以後、慶應義塾大学三田情報センター等も同様の調査を行いました。劣化率はアメリカの調査に比べると低かったのですが、用紙の酸性度と劣化の相関性が認められました。

日本での洋紙の中性紙化は、書籍の本文用紙に使われる上質紙に関しては進んでいますが、中質紙・上更紙・新聞紙などではあまり進んでいません。中性紙は、保存性を目的にした製品と、従来の酸性紙処方に中和剤を添加して中性化した製品とが混在しています。

国立国会図書館は、1986年から受け入れ新刊図書のpHを測定しています。調査対象は、無作為抽出された国内刊行資料で、中性紙チェックペンを用いて測定します。1992年の測定以降、民間出版物の中性紙使用率は80%前後の安定傾向を示しています。一方、国や自治体の刊行する出版物における中性紙使用率も、1997年頃までは50%前後と低い値を示していましたが、順調に上昇し、2001年の調査では80%を突破しています。

日本にはアメリカの「印刷された図書館資料のためのパーマネンス規格」(ANSI Z39.48-1984)のような、保存を目的とした用紙の規格がありません。図書館・文書館・出版界・製紙業者等の共同で作成することが望まれています。
 

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