資料保存の豆知識・紙そのものが劣化します
紙そのものが劣化するとは?
紙の内部に含まれる「酸・リグニン」などの不純物によって、時間の経過とともに紙が変色したり、ぼろぼろになったりすることです。日本では「酸性紙問題」として1990年代から大きく取り上げられるようになりました。 紙が酸性化するおもな原因は、硫酸アルミニウムです。インキのにじみをふせぐ「サイズ剤」を定着させるために使われてきたのです。硫酸アルミニウムは、空気中の水分や紙に含まれる水分と反応して、長い年月で硫酸になります。硫酸には強い脱水作用があり、水分がうばわれることによって紙の繊維が角質化し、紙はかたくもろくなり、ボロボロになってしまいます。 リグニンは光と結合して紙の変色の原因となります。 |
![]() ▲酸性紙による劣化 1925年パリ 特種製紙株式会社所蔵 |
紙ベースの作品・資料を長く保存するには?
お手持ちの作品・資料などをご家庭で保存するためには、
・酸性紙のような質の悪い紙は別置きにする |
・保存用品は長期保存に適した製品を利用する |
1985年までに出版された書籍の本文用紙(上質紙)のほとんどが酸性紙です。現在ではその大半が中性紙となっていますが、中質紙・上更紙・新聞紙などの中性紙化はあまり進んでいません。
なお、中性紙は、長期保存を目的にした製品と、従来の酸性紙処方に中和剤を添加して中性化した製品とが混在している状況です。