保護・保存に使われる紙の品質
長期使用用途の紙の国際規格ISO9706
長期使用する紙の本文や、文化財や貴重書の保存にも使用する紙や板紙の規格がISO9706です。
抽出pHの範囲、紙の強度、残留リグニン量、アルカリの残留量などが決められています。
この規格に合わせて設計した紙は抽出液が弱アルカリ性になります。
化学変化に弱いものの保護に使用する紙
これまでに研究成果から、酸やアルカリに弱い材料や文化財があることもわかっています。
このような用途には、酸やアルカリができるだけ少ない紙の使用を推奨します。
結果的にこの紙は抽出液が中性(pH7前後)になります。
抽出pHについて
ISO9706では抽出pHの測定方法としてISO6588-1:2012が参照されています。
この方法はJIS P8133-1:2013と同じであり、抽出液に塩化カリウム溶液を添加後に測定するため、抽出物が少ない測定対象に対しては塩化カリウム溶液自体のpHの影響を受けます。
そのため、抽出物が少ない紙の抽出pHは塩化カリウムを使用しない方法と現行法の間で測定値に差が生じることがあります。
出典:文化財保存修復学会第42回大会研究発表集P096 P.410
※ ISOやJIS規格の詳細な内容につきましては各機関発行の文書をご確認ください。